残業を25時間こなして、ようやく今月の手取りが24万円。工場のラインを流れる製品を目で追いながら、私はふと考えた。この立ち仕事をあと20年、30年と続けられるだろうか。
私の総資産は現在、約170万円。そのうち122万円を株式で保有し、NISAを使ってeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)に毎月6,500円を積み立てている。配当収入は年間約26,000円。少しずつだが、自分の力でお金を増やす感覚を掴み始めている。しかし、これだけで「老後資金」の準備が十分だとは、とても思えなかった。そこで目を向けたのが、会社員の「最強の節税対策」とも噂されるiDeCo(個人型確定拠出年金)だった。
なぜ私はNISAだけでなく、iDeCoを調べ始めたのか
毎日工場で働き、決まった給料をもらう私たち会社員にとって、手取りを増やす数少ない手段が「節税」だ。いくら残業を増やしても、所得税や住民税で引かれる金額が増えれば、手元に残るお金は思ったほど増えない。工程改善の仕事をしている私は、常に「無駄を省く」ことを考えている。税金の無駄を省き、効率的にお金を残す方法を模索する中で、iDeCoという選択肢に行き着いた。
iDeCoは、自分で掛金を出し、自分で運用商品を選んで資産を形成する私的年金制度だ。厚生労働省の「確定拠出年金制度」(厚生労働省:確定拠出年金制度)にも、その概要や法的な位置づけが詳しく記載されている。
NISAとの一番の違いは、毎月の掛金が全額「所得控除」になる点だ。国税庁の「小規模企業共済等掛金控除」(国税庁:No.1135 小規模企業共済等掛金控除)に規定されている通り、支払った掛金は課税所得から全額差し引かれる。つまり、税金を減らしながら将来のお金を貯められる仕組みなのだ。
だが、この「全額所得控除」という言葉の響きに釣られて、私は危うく大失敗しそうになった。
年金だからこその罠、私が体験した「手元資金のロック」
節税になるなら、限度額いっぱいの毎月23,000円(※企業年金がない会社員の場合)を掛けよう。そう意気込んでシミュレーションをしていた時のことだ。ふと、過去の自分の「やってみてダメだった」失敗が頭をよぎった。
以前、ブログ運営やYouTube(動物チャンネル)の機材購入、そして車の車検が同じ月に重なり、一気に15万円以上の出費が発生したことがあった。その際、手元のキャッシュ(現金)が少なくなってしまい、非常に焦った経験がある。
iDeCoに回したお金は、原則として60歳になるまで1円も引き出すことができない。ここがNISAとの決定的な違いだ。もし私が「節税したいから」と無理をして毎月23,000円をiDeCoに回していたら、突発的な出費に対応できず、生活が破綻していたかもしれない。毎月の手取りが25万円から35万円ほどで推移する工場勤務の会社員にとって、数万円の資金が数十年間にわたってほぼロックされるリスクは想像以上に重い。
投資はあくまで自己責任であり、自分の生活防衛資金を確保した上で行うのが大原則だ。税金が安くなるメリットばかりに目を奪われ、自分の家計の「工程管理」を怠ると、予期せぬトラブルで身動きが取れなくなる。
どっちを選ぶ?工場勤務の私が考えた最適な使い分け
NISAとiDeCo、どちらから手を付けるべきか迷う人も多いのではないだろうか。私はまずNISA(月6,500円)から始めたが、それはいつでも解約して現金化できる安心感があったからだ。
ここで、両者の違いをわかりやすく表にまとめてみた。
| 項目 | NISA(つみたて投資枠) | iDeCo(個人型確定拠出年金) |
|---|---|---|
| **主な目的** | 自由な資産形成(いつでも引出可) | 老後資金の準備(60歳まで引出不可) |
| **毎月の積立額** | 年間120万円まで(月10万円目安) | 会社員は最大月1.2万〜2.3万円(勤務先による) |
| **節税効果** | 運用益が非課税 | 運用益非課税 + 掛金全額が所得控除 |
| **受取時の税金** | 非課税 | 退職所得控除や公的年金等控除が適用 |
| **元本割れ** | 元本割れのリスクがあります | 元本割れのリスクがあります |
※なお、現在の法律や税制は令和7年4月時点のものであり、将来的に制度改正や法律の変更が行われる可能性がある(厚生労働省の「確定拠出年金制度:制度改正」を参照)。
私の結論としては、直近10年以内に使う可能性があるお金(車の買い替え、家の修繕、子供の教育費など)はNISAで運用し、60歳まで基本的に触らないと決めた「本当の老後資金」だけをiDeCoに回すのが賢い選択だと考えている。より詳しい内容はnoteでも解説しています。私が日々の作業自動化(Pythonによるブログ管理など)で得た時間を使って、どのように資産配分を考えているかも合わせて発信しているので、気になる方は参考にしてみてほしい。
会社員の私がiDeCoを始めるまでの全プロセス
iDeCoを始める際、一番面倒なのが「会社(総務部)に書類を書いてもらうステップ」だ。工場の総務部はいつも忙しそうで、私のような現場の人間がプライベートの投資に関する書類を持っていくのは少し気が引けた。しかし、ここを乗り越えないと始まらない。実際に私が進めた手順は以下の通りだ。
ステップ1:金融機関(ネット証券など)からiDeCoの申込書類を取り寄せる。ネットで簡単に請求できる。
ステップ2:届いた書類一式の中から「事業主の証明書」を取り出し、工場の総務部または人事部に提出して記入を依頼する。「iDeCoを始めたいので、この書類の記入をお願いします」と言えば、向こうは慣れているのでスムーズに対応してくれる。
ステップ3:会社から返送された証明書と、自分で記入した申込書を合わせて金融機関に郵送する。
ステップ4:金融機関および国民年金基金連合会の審査を待つ。承認されるまで1〜2ヶ月ほどかかるため、気長に待つ必要がある。
ステップ5:口座開設が完了したら、毎月の掛金と運用する商品(全世界株式やバランス型など)を設定する。
一度設定してしまえば、あとは毎月自動で給与口座や指定口座から引き落とされる。工場のライン作業と同じで、最初の「仕組み化」さえ終われば、あとは自動運転だ。
まとめ
iDeCoは所得税や住民税を抑えながら老後の備えができるため、私たち会社員にとっては非常に魅力的な制度だ。しかし、60歳まで引き出せないという制約がある以上、無理な金額で始めるのはおすすめしない。投資において「基本的に損をしない」方法は存在せず、選ぶ商品によっては元本割れのリスクがあります。
まずは家計のバランスを見極め、毎月の固定費や生活費を圧迫しない範囲からスタートすることが、長く続けるための最大の秘訣だ。工場の生産ラインの改善と同じように、自分の資産形成も「少しずつ、確実に、持続可能な形」でアップデートしていこう。

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