昨年、家族の歯の治療と自分の通院が重なり、1年間の医療費を計算したら12万4,000円を超えていた。
工場のラインで「コンマ数秒のロスを削る」仕事をしている身としては、この出ていったお金をただ眺めているわけにはいかない。税金を取り戻せる「医療費控除」の存在は知っていたが、いざ自分で確定申告をするとなると億劫で、ずっと後回しにしていた。平日は朝から晩まで現場で機械を回し、夜は副業のYouTubeやブログの作業、そしてPythonを使った自動化ツールの調整に追われている。時間がとにかく足りない。
「まあ、休日についでにやればすぐ終わるだろう」
そう高を括っていた私は、確定申告の期限ギリギリの3月上旬、地獄を見る。机の上に山積みになったクシャクシャの領収書と、e-Taxの不親切なエラー画面を前に、深夜2時まで頭を抱えることになった。工場の工程改善ではプロを自負しているのに、自分の身の回りの効率化は全くできていなかった。あのときの焦りと後悔は、今でも忘れられない。
領収書を山積みにして絶望した、あの確定申告の夜
確定申告をしようと思い立った私は、まず引き出しに放り込んであった1年分の医療費の領収書をすべて机の上にぶちまけた。ドラッグストアで買った風邪薬のレシートから、総合病院の大きな領収書まで、合計で40枚ほどあった。
これを1枚ずつ、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」の画面に手入力していこうと考えたのだ。これが最初の大きな失敗だった。
入力し始めて15分。画面の項目を埋める作業は想像以上に面倒で、10枚目を入力したあたりで「これ、あと何十分かかるんだ?」と気が遠くなった。さらに、合計金額が手元の電卓と合わない。どこかで入力を間違えたらしい。どの数字が間違っているのか探すだけで、さらに30分を浪費した。現場の作業で言えば、部品の配置を考えずに適当に組み立てを始めて、途中でネジが足りなくなって最初からやり直すようなものである。
そもそも、医療費控除は「支払った医療費の総額が年間10万円(その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額)を超えた場合」に適用される(国税庁「No.1120 医療費控除の対象となる医療費」より)。
当時の私のように「とにかく領収書を全部打ち込めばいい」という力技で挑むと、時間をドブに捨てることになる。事前にデータを整理しておくという「段取り」が、工場の仕事と同様に確定申告でも最重要だった。
風邪薬はOKで、予防接種はNG?境界線で迷ったこと
もう一つの失敗は、「何が医療費控除の対象になり、何が対象外なのか」を全く整理していなかったことだ。
領収書の中には、インフルエンザの予防接種や、ドラッグストアで買った目薬、ビタミン剤のレシートも混ざっていた。これらをすべて一緒くたにして申請しようとしたが、国税庁の基準をよく確認すると、控除の対象外になるものがたくさん混ざっていることに気づいた。これらを正しく分類しないと、後から税務署から問い合わせが来たり、修正申告が必要になったりして、余計に手間がかかるかもしれない。
私が実際に迷い、国税庁の情報を調べて整理した「医療費控除の対象・対象外」の判断基準は以下の通りだ。
| 項目 | 医療費控除の対象となるもの | 医療費控除の対象外となるもの |
|---|---|---|
| 治療・診察 | 医師による病気の治療費、虫歯の治療費 | 健康診断の費用、美容整形の費用 |
| 医薬品の購入 | 治療のための風邪薬、処方された薬代 | 予防や健康増進のためのビタミン剤、サプリメント |
| 交通費 | 病院に通うための電車代、バス代(領収書なしでもメモで可) | 自家用車で通院した際のガソリン代、駐車料金 |
| その他 | 治療に必要な松葉杖などの器具購入費 | インフルエンザなどの予防接種費用 |
※なお、医療費控除に関する税制や法律は変更される可能性があるため、申請時には多くの場合最新の国税庁ホームページ等で詳細を確認してほしい。
私の場合、毎日の通勤途中にドラッグストアで買った「ただの栄養ドリンク」のレシートまで混ぜていたため、それらを仕分ける作業にさらに時間を取られることになった。最初から対象を絞り込んでおけば、入力する件数自体を半分近くに減らせたはずだった。
工場員がe-Taxを攻略したスマートな申請手順
この失敗を経て、翌年からはやり方をガラリと変えた。Pythonを学んでいる身としては、手入力の手間は極限まで減らしたい。
現在、私が実践しているe-Taxでの申請手順は以下の通りだ。この手順通りに進めれば、当時の私のように深夜までパソコンの前でフリーズすることはなくなる。
- ステップ1:国税庁指定のExcelフォーマット「医療費集計フォーム」をダウンロードする
国税庁の確定申告作成コーナーから、専用のExcelファイルをダウンロードする。ここに「支払先」「支払った人」「金額」などをまとめて入力していく。この段階で、上記の表を参考に「対象外」のものはあらかじめ弾いておく。
- ステップ2:マイナポータルとの連携を済ませておく
もしマイナンバーカードを持っているなら、マイナポータルとe-Taxを連携させるのが一番早い。これをしておくと、1年間で支払った医療費データ(窓口で保険証を提示したもの)が自動で取得され、Excelへの入力すら不要になる場合がある。私はこの連携を設定したことで、作業時間が劇的に短縮された。
- ステップ3:集計データを「確定申告書等作成コーナー」にアップロードする
作成した「医療費集計フォーム(Excel)」、またはマイナポータルから取得したデータを、国税庁の作成画面に読み込ませる。これで一瞬で金額が自動計算され、入力ミスによるエラーも防ぐことができる。
- ステップ4:還付金の受取口座を指定して送信する
最後に画面の指示に従って必要事項を入力し、マイナンバーカードを使ってスマホ等で電子送信(e-Tax)する。紙の領収書を税務署に提出したり郵送したりする必要はなく、自宅の机の上だけで完結する。
年間26,000円の配当と、医療費控除で戻ってきたお金の重み
私は現在、約170万円の総資産のうち、約122万円を株式で保有している。年間で得られる配当収入は、およそ26,000円。毎月オルカン(全世界株式)をNISAで6,500円ずつコツコツ積み立てている。
株式投資は、当然ながら元本割れのリスクがある。自己責任のもとで慎重に運用しなければならないし、年間26,000円の配当を得るために、どれだけの時間と資金を市場に晒しているかを考えると、お金の重みが身に染みる。
それに比べて、この「医療費控除」はどうだろうか。
確定申告を正しく行うことで戻ってくる数千円、あるいは数万円の還付金(所得税の還付や翌年の住民税の減額)は、リスクをとらずに手に入る「確実な果実」のようなものだ。医療費を多く支払ったという事実があるならば、国が認めた制度を利用して自分の手元にお金を残すのは、立派な資産形成の一環であると私は思っている。
工場の現場で「1円のコストカット」のために日々知恵を絞っているのに、家庭の税金で数千円、数万円を垂れ流しているのは矛盾している。副業(YouTubeやブログ)の収益を1万円増やすのは簡単ではないが、確定申告で数千円を守るのは、正しい手順を知っていれば誰にでもできる。
より詳しい内容はnoteでも解説しています。私が副業と並行してどのように資産形成の仕組みを作っているか、リアルな数字を交えて書いているので、興味があれば覗いてみてほしい。
まとめ
医療費控除の申請は、一見すると難解で面倒な作業に見える。だが、実際は事前の「段取り」さえ間違えなければ、e-Taxを使って自宅にいながら短時間で終わらせることができる。
私のように、領収書をただ山積みにして力技で入力しようとすると、時間ばかりが過ぎて挫折することになる。まずは、医療費集計フォームを活用するか、マイナポータルとの連携を進めることを強くお勧めする。
年間10万円という壁は高く見えるかもしれないが、家族全員分の医療費や、通院のための交通費(電車・バス代)、ドラッグストアで購入した治療薬の総額を合わせると、意外とそのラインを超えているケースは多い。
自分の労働の対価として得た大切なお金だ。投資で増やすことも大切だが、まずは目の前にある「本来払わなくてもよかった税金」をしっかりと手元に取り戻すことから始めてみてはどうだろうか。


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