30代半ばで35年の住宅ローンを組んだとき、手元に残った通帳の残高を見て、言葉にできない重苦しさを胃のあたりに感じた。
手取り約30万円の工場勤務。毎日現場で組み立て工程のラインに入り、少しでも作業を効率化しようと「1秒の無駄」を削るカイゼン活動に取り組んでいる。そんな私が、プライベートでは何千万円という、気の遠くなるような借金を背負ってしまったのだ。
現在の私の総資産は約170万円。そのうち122万円を個別株などに充て、NISA口座を使って毎月6,500円ずつ全世界株式(オルカン)をコツコツ積み立てている。配当収入は年間約26,000円。お小遣い程度ではあるが、自分で種をまいて育てた果実のようなもので、着実に積み上がっている実感が何よりの励みだ。仕事の合間には、PythonとAIを駆使して作業を自動化し、動物のYouTubeチャンネルやブログ、noteの更新をなんとか続けている。
限られた時間と資金の中で、なんとか資産を増やしたい。そうもがく中で、真っ先に頭をよぎったのが「一刻も早く住宅ローンを繰り上げ返済して、借金を減らすべきではないか」という問いだった。
焦って10万円を返済した私の手痛い失敗
今思い出しても恥ずかしいが、私は数年前、手元にろくな貯金もない状態であるにもかかわらず、10万円を無理に捻出して「期間短縮型」の繰り上げ返済を行ったことがある。工場の仕事と同じように「無駄な金利(コスト)は1秒でも早く削減するのが正解だ」と思い込んでいたのだ。
結果は散々だった。借入残高がわずかに減り、完済時期が数ヶ月早まったという数字上の自己満足は得られたものの、手元のキャッシュが極端に減ってしまった。その直後に車のエアコンが壊れて突然の修理出費が発生し、結局はクレジットカードの分割払いを利用する羽目になった。金利を減らすために繰り上げ返済をしたのに、より金利の高い分割払いを使うという本末転倒な事態に、自分の計画性のなさを深く呪った。
やってみて初めて分かった。住宅ローンを早く返したいという感情に任せて、手元の現金を失うのはあまりにリスクが高い。
特に、今の日本は驚くほどの低金利環境が続いている。私のローンも変動金利で、適用金利は1%を大きく下回っている。焦って返済する前に、そもそもなぜこれほど金利が低いのか、そしてこの状況がいつまで続くのかを、少し冷静に調べてみることにした。
なぜ日本の金利はこんなに低いままなのか
工場の改善業務では、問題の根本原因を突き止めるために「なぜ」を5回繰り返す。住宅ローンの金利についても、なぜこれほど低い状態が維持されているのか、その背景を知る必要があった。
国債の金利と、私たちの住宅ローン金利は深く結びついている。財務省が公表しているデータを見てみると、日本の財政状況は極めて特異な状態にあることが分かる。
財務省が2014年2月10日に発表した資料によると、国債や借入金などを合計した、いわゆる「国の借金」は2013年末時点で1017兆9459億円に達した。当時の日本の推計人口(1億2722万人)で割ると、国民1人あたり約800万円の借金を抱えている計算になる。さらに2019年時点では公債残高が897兆円に達し、政府の一般予算における約100兆円の歳入のうち、約3割にあたる30兆円強が国債の発行によって賄われている状態だった。
これほど債務が増加していれば、普通なら「財政破綻の危機」として国債の信用が落ち、金利が急上昇してもおかしくない。しかし、現実には債務の増加に逆行するように、国債の金利は低下を続け、2019年時点でも1%を切る世界最低水準の超低金利が維持されていた。
この不思議な現象が起きている理由は、日本銀行が独自通貨を発行し、自国通貨建ての国債を買い支える能力を持っているからだと言われている。もともと日本の国債は国内の民間金融機関がその大半を保有していたが、アベノミクスに伴う大規模な量的金融緩和政策が進んだ結果、2023年現在では、発行された国債の約半分以上を日本銀行が保有するに至っている。
ただし、この状態が永遠に続くとは限らない。日本政府や財務省は、こうした政府債務の膨張を問題視しており、将来的には増税や歳出削減などの緊縮財政政策を通じて、財政再建を進める必要があるという見解を示し続けている。
税制や法律、金融政策のルールは時代とともに変更される可能性が常にある。だからこそ、今が超低金利だからといって、「これからもずっと変動金利は上がらない」と楽観視しすぎるのは禁物だと感じている。
固定金利と変動金利、私の繰り上げ返済判断基準
こうした背景を踏まえた上で、私たちが住宅ローンを選ぶ際、あるいは繰り上げ返済を検討する際には、固定金利と変動金利の特徴を整理しておく必要がある。それぞれのメリットとデメリットは、大まかに以下のように整理できる。
| 金利タイプ | メリット | デメリット | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| **変動金利** | ・現在の適用金利が非常に低い ・毎月の返済額を最小限に抑えられる | ・将来的に金利が上昇した際、返済額が増えるリスクがある ・返済計画が途中で変わる可能性がある | ・金利上昇時に一括返済できる余力がある人 ・手元の資金を投資などで運用したい人 |
| **固定金利** | ・完済までの返済額が確定するため、生活設計が立てやすい ・市場金利が上がっても影響を受けない | ・変動金利に比べて、契約時の金利が高く設定されている ・金利が下がった場合の恩恵を受けられない | ・将来の金利変動による不安を避けたい人 ・毎月の支出をほぼ固定して管理したい人 |
私自身は、少しでも固定費を削り、余った資金を運用に回したいと考えたため変動金利を選択した。現在の低金利であれば、無理に住宅ローンを繰り上げ返済するよりも、その資金をオルカンなどのインデックス投資に回した方が、長期的な資産形成において合理的かもしれないと考えたからだ。
しかし、投資には当然、元本割れのリスクがあります。年間約26,000円の配当金を得ている個別株にしても、保有している資産の評価額が日々上下するのを見ていると、精神的な負担がまったくないわけではない。株式投資の期待リターンがローンの金利を上回る可能性が高いと思いつつも、確実な未来などどこにも存在しないのだ。
より詳しい内容はnoteでも解説しています。私が実際にどのタイミングでいくら繰り上げ返済に回し、どの程度を投資に配分しているのか、そのリアルな家計の内訳を記しているので、同じように悩む人のヒントになるかもしれない。
私が行き着いた、繰り上げ返済の最適ステップ
工場での工程改善と同じように、住宅ローンの返済についても、感情を排除した仕組み化が必要だ。何度も失敗を重ねた末に、私がたどり着いた繰り上げ返済の最適ステップを以下に紹介する。
ステップ1:生活防衛資金を基本的に確保する
まずは、万が一仕事がなくなったり、突発的な出費が発生したりしても半年〜1年は暮らせるだけの現金を確保する。これがない状態で繰り上げ返済をするのは、ブレーキのない車で高速道路を走るようなものだ。私のように、エアコンの修理代に怯える日々を送りたくないのであれば、この資金には基本的に手を付けてはならない。
ステップ2:住宅ローン控除の期間を確認する
住宅ローン控除が適用されている期間中(多くは10年〜13年)は、ローンの年末残高に応じて税金が控除される。現在の超低金利で借りている場合、控除される金額の方が、支払っている利息よりも多くなる「逆ざや」の状態が生じることがある。この期間中に焦って繰り
まとめ
- 焦った繰り上げ返済は本末転倒のリスクがある:

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